セラミックナイフ開発エピソード
~一つの素材から、新しい文化を創る~
京セラが一般家庭用にセラミックナイフを販売し始めたのは1984年のことでした。
当時は、電気によって世の中が変わり、プラスチックによって人々の生活が変わり、あらゆる分野で生活や文化が変容していきました。
私たちは、"21世紀新・新石器時代"といえるような、あらゆる生活の場面にファインセラミックスが溢れ、人々の生活、心を豊かにしていきたいという想いで、当時は部品事業がメインであった京セラのファインセラミックスを中心とした材料・技術をお客様に直接届けるべく、セラミックナイフの販売を始めました。
最初のナイフは、見た目はしっかりとした包丁の形をしていましたが、刃付け技術に課題があったり、金属包丁に比べてブレード(刃)が厚く(薄くすると割れてしまうので、強度的に厚くせざるを得なかった)、食材が切りにくかったり、大根やニンジンなどの食材が割れてしまったりと、課題が多くありました。
また、その当時は、セラミックナイフは3万円以上する高価なもので、百貨店などの様々な店舗で取り扱いが始まるまでに沢山の苦労がありました。
「白くて切れなさそう、おもちゃみたい」と言われるセラミックナイフの啓蒙活動としては、実演販売が中心でした。
店舗の店頭はもちろん、即売会、展示会など、沢山のお客様に見て頂ける機会を探し、お客様に説明をしながら販売をしていきました。
セラミックナイフの鋭い切れ味を知っていただくため、お客様に実際に包丁を試していただき、実感してもらう事で、少しずつセラミックナイフを知っていただくことができました。
材料開発としては、1987年に発売をした「ライトキッチン」というシリーズから大幅に改良されました。
また、刃付けに関しては、先端に向かって滑らかに刃の付く「ハマグリ刃付け」を採用することで、食材に刃がスッと入り、格段に切れ味が向上しただけでなく、刃へのダメージも軽減され、刃欠けしにくいセラミックナイフが実現しました。
セラミックナイフが世に多く知られるようになるきっかけとなったのは、2006年のカラフルシリーズの展開でした。
当時は、ハンドルが黒色のセラミックナイフしか無かったため、セラミックナイフを購入してくださるお客様は、
「サビない」「切れ味が長持ちする」など、セラミックスの特長をよく知ってくださっている方がほとんどでした。
逆に言うと、セラミックナイフの特長を知らない方には、手に取っていただけないといった課題がありました。
しかしながら、このカラフルシリーズのナイフは、白い刃とカラフルなハンドルのコントラストがとても綺麗で、
セラミックスの特長以前に、カラフルなカラーを気に入って、購入してくださるお客様が数多くいらっしゃいました。
さらに、購入のキッカケが「綺麗な見た目」であっても、実際にご使用いただくと、セラミックナイフの「切れ味」や「軽さ」など、良さを知っていただき、
これまでにない、新たなセラミックナイフのファンを増やすことができました。
そして2021年、セラミック刃の素材、デザインを刷新し、素材から形まで包丁における全ての面で「心地よさ」を追求し、販売を開始したのが「cocochical(ココチカル)」です。
刃の素材は、10年以上の研究開発を経て、素材から新たに見直し、切れ味が従来品より2倍以上長持ちする新素材刃の開発に成功しました。
ハンドルも持ち方の自由度を高めるハンドル形状を追求しました。
ハンドルと刃を極力スムーズにつないだ段差の少ない形状、ハンドル腹側の緩やかなR と柄尻から先へ向けた穏やかなテーパーは、人それぞれの持ちやすい位置や、切り方、力のかけ具合に応じた握りかえが自然かつ自由にできる形を実現しています。
セラミックナイフの発売を始めて、はや40年が経とうとしています。
2020年には累計出荷本数が2,000万本を突破し、多くの方にご愛用をいただいております。
発売当初は、「軽く」「サビない」「お手入れ簡単」セラミックナイフの良さを皆さまに知って頂くために、実演販売等を活用して、啓蒙活動を実践してきました。
地道な活動で、少しづつセラミックナイフの良さを、浸透させていく事ができました。
販売累計1000万本を突破した頃から、セラミックナイフの販売を通じて社会貢献に繋げたいという想いから「親子でクッキング」の食育活動や、ピンクリボン活動を実施していきました。
我々は、単なる包丁屋ではなく、セラミックナイフの拡販により、世の中の役に立ちたい。そんな思いで事業活動をしています。
今後もセラミックナイフを、一人でも多くの方に使って頂き、使う喜びを体感頂き、販売を通じて、少しでも社会貢献に繋がる事業活動を継続していきたいと思います。