自然と共に生きる300年の農園

― 小田原・あきさわ園が届ける"本物の味" ―

今回は「食と農家」をテーマに、あるイベントをきっかけに出会った農園をご紹介します。
神奈川県小田原市の山あいに、独自の哲学で野菜や果物を育て続ける「Natural Farm Akisawa(あきさわ園)」。
代表の秋澤史隆さんに、実際の農業体験を交えながらお話を伺いました。

農薬に頼らない、自然のしくみに沿った農業

あきさわ園のコンセプトは、「子供にも安心して食べさせられるもの」を届けること。できる限り農薬を使わず(減農薬)、動植物との共生を大切にしながら、自然のしくみに逆らわない有機栽培を実践しています。

農薬を使わずに美味しさを保つことがいかに難しいか——その苦労を知りながらも、作業をされている方々から伝わってくるのは、「新鮮で本当に身体に良いもの、旬のものを食べてほしい。そして、選んでほしい」という真摯な想いでした。

小田原市明沢地区でのみかん栽培の歴史は、およそ300年。長い年月をかけて品種改良や栽培技術の向上を重ね、今なお美味しいみかんの産地として知られています。

「適地適作」 から生まれる恵み

その背景にあるのが、秋澤さんが大切にされている「適地適作」という考え方です。

”その土地の気候や地形に合わせて、無理なく育つ作物を育てる。”

小田原は温暖な気候と、湘南から吹き込む心地よい海風が通り抜けるエリア。みかん栽培にとって理想的な条件が揃っているからこそ、あの甘くて美味しいみかんが生まれます。

今回わたしたちが体験させていただいたのは、キウイフルーツの受粉作業。一つひとつ、すべて手作業で丁寧に行われています。この農地はかつてみかんを栽培していましたが、木の状態や環境の変化を見据えてキウイフルーツへ転換しました。こうした柔軟な試行錯誤が、新しい商品開発のきっかけにもなっています。

他にも、柑橘・ブルーベリー・オリーブ・緑化樹木などの苗木生産を手がけるほか、2014年には湘南ゴールドやみかんの規格外品を活用した6次産業化の計画が、小田原で初めて農林水産省から認定を受けました。

まるで日本全体の縮図、里山の可能性

あきさわ園の取り組みは、農産物の生産にとどまりません。形の悪い果物を加工品へ生まれ変わらせたり、耕作放棄地となっていた梅林や竹林を再生したり、釘や金物を使わない木組みの建築を手がけたり——もともとある資源をアップサイクルしながら、暮らしに必要なことへ幅広く向き合っています。 秋澤さんは小田原のことを「日本全体の縮図のような場所」と表現されていました。

”10年ほど前、大量に廃棄していた青みかんを再利用して青みかんジュースを売り始めたとき、地元の農家からは「何をしているんだ?」と疑問の声があった。でも続けていくうちに、みんなも真似し始めるようになってきた。”

先が見えないチャレンジでも、続けることで周囲を動かす。その姿勢が、あきさわ園の今につながっています。

セラミックナイフで、旬の味をひとくち

せっかくなので、あきさわ園で収穫したフルーツを京セラのセラミックナイフ(cocochical)でカットしていただきました。「軽くて、錆びない」とご好評をいただき、農園の新鮮なフルーツと道具の使い心地、両方を楽しむひとときになりました。

食の豊かさ × 他の産業 —— 秋澤さんが描く未来

農作業と試し切りを終えて、改めて秋澤さんの言葉が印象に残りました。

”みかんだけじゃない。日本の里山と他の産業を掛け合わせることで、暮らし全体が豊かになる。
色々な企業と連携しながら「食の豊かさ」を一緒に考えていきたい。”


世界中を旅して気づいたのは、日本の豊かな環境の魅力。その里山の良さをもっと世界へ発信できる可能性があると確信し、だからこそ新しいチャレンジをし続けたい —— そんな夢と情熱が、秋澤さんの言葉からあふれていました。「暮らしを豊かにする」という共通の目標に向かって、作り手の視点から学ぶことの多い訪問でした。秋澤さん、ありがとうございました。

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